#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

忍び寄るギリアド アドウッド The Testaments雑感

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注意: もちろんですがネタバレしてます。

邦訳出てないので楽しみにしてる方は以下読まないようお願いします。

 

マーガレット・アトウッド侍女の物語」の続編”The Testaments”読んだ...前作はギレアド初期に侍女となったひとりの女性の手記という形の物語だったけれども、今回は時代設定がおそらくギレアド中期〜後期、なんと手記を書くのはリディア伯母(しかも第三の壁ぶち破ってこっちに話しかけてくるリディア伯母...完全にドラマ版でリディアを演じたアン・ダウドで脳内再生されるのでDear Reader,とか言ってくるリディア伯母怖すぎた...)そして、証言者として侍女の子として生まれコマンダーの家で育ったアグネスと、同じく侍女の子として生まれたけれどもその侍女が子供を海外に逃亡させ、自分の出生について知らずにカナダで育ったデイジーのお話になっている。

前回は一人称で語られる物語で、わたしは前作を読みながら自分が「侍女になるかもしれない未来」そしてそれが決しておとぎ話ではないことを考えてこれはもはやフィクションではない...と戦慄したのだけども、今回はねえ、まさかの「自分が伯母になってしまうかもしれない未来」がわりと手に取るように伝わってきて絶望しました。わたしはあのやり方をしてくるギレアドに抗える気がしない...

なぜならあの鋼鉄の女、伝説の伯母リディア(まじでリディアはギレアド内で伝説になってて、もはや各ご家庭でマーサが子供達に「そんなことしてるとリディア伯母がくるよ!」とか年頃の娘たちには「リディア伯母ならあなたにどうしろというでしょうか?」みたいなもはやコクソンの國村さん(あまりの怖さに韓国国内の各ご家庭で「悪さをすると國村さんがくる!」と各ご家庭で子供達を諌めるためのミームになったらしい)とか、なつかしの”What Would Jusus Do”ブレスレットみたいなことになってるんですよね。THE 伝説。しかもコマンダーたちの子供が通う学校にはリディアの肖像写真が金縁の額に入れられて飾ってあり、子供達から「あの絵のリディアの目が動く」とか言われてもはや音楽室のベートーヴェンみたいなことになってるんですよ。)そう、そのリディアは実は判事であり、法律家時代は女性の権利のために活動してきた女だったことが今作で明かされるんですよ。それが、そんなリディアですら自分の身を守るために伯母になることを、生きるために選択してしまう。賢い女、適応能力のある女ほど、もしかしたら生存のために伯母になってしまうのかもしれない。しかもその賢さや、(判事になるほど勉強を頑張れた)真面目さによってその後伯母としてもガンガン実績を作ってしまうのかもしれない...リディアの物語を読むと、自分がそうなってしまう未来が想像できてしまって、自分が怖い。

例えばリディアは初代伯母4名と最初の顔合わせ&会議の時に「私にはイデオロギーはない。だから強いのだ」って言ってて、もはや彼女はギレアドやヤコブの息子たちの理念に共感したわけではなくていかに伯母4人の中でイニシアチブを取るかっていう戦略を立てるんですよね...わかる....この中で1番仕事できるようになりたいみたいなやつだ...また自分が怖い...

それで続編で描かれるギリアドでは、コマンダーの娘たちもギリアドの性交渉や男性との不用意な接触を防ぐための教育によってペニス恐怖症になった女の子たちは若い年齢で結婚させられそうになると伯母になりたいと宣言して伯母になるためにトレイニーとなるんですよね...なんかもうそれもつらい。ちょっと面白かったのは伯母にスカウトされたら現世での名前を捨ててリストから名前を選ぶんだけど、その名前が「ギリアドになる前の世界で女性たちが使っていた製品の名前」らしい。アグネスが選んだヴィクトリアはもしかしてヴィクトリアズ・シークレット...?女性たちに安心感を与えるために馴染みのある名前に改名するらしい...ひぃ〜っ!リストには他にもIVORY(石鹸)やメイベリン(メイベリン!!!!!!)なんて名前もある。あとウェンディ伯母とかもでてくるわけ....!

世界はギリアドにまた一歩近づいているとアトウッドは言う。そんな世界の中で、わたしは女性として、被害者にもそして加害者にもなりうるのだとすれば、もうどうしたらいいのか...普段被害者フェイスしてしまいがちだけどいつでもわたしは加害者に加担してしまうことも、加害者になってしまうことだってあるのだ。

と色々考えたりしたんだけど、続編としてはこの物語はどうなんだろう?いまいちリディアがギレアドに反旗を翻した動機も踏み込み切れていないし、女の子たちの描写もすこしステレオタイプっぽくはないかなあと思ったりしたのでした。ベッカの自己犠牲とかもさあ、まあそうかもしれないけど割とありきたりじゃない?早く誰かと話したいから早く邦訳でてほしいなあ。

Unofficialですけどわたしとしては侍女の物語の続編は、マッドマックス 怒りのデスロード!あのときに侍女たちを助けるフュリオサがその理由を「Redemption」だと言ったけれど、リディア伯母もそんなことを考えていたりしたのだろうか。

とにかくいま世界一ギレアドに近づいていそうな日本、このままじゃいけないよな...