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#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

翻訳: ロクサーヌ・ゲイ 「絶望の大胆さ」

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アメリカ大統領選でトランプが次期大統領となったことについて、ロクサーヌ・ゲイがNY Timesにエッセイを寄稿しました。その翻訳を掲載します。

 

原文はこちらから

NY Times

"The Audacity of Hopelessness - NYTimes.com" Roxane Gay

 

<翻訳>

ロクサーヌ・ゲイ 「絶望の大胆さ」

 

当期の選挙運動期間中、わたしはヒラリー・クリントンの勝利を確信していました。ヒラリーこそ、大統領にふさわしい資格があり、とても力強いキャンペーンを行っていたからです。選挙結果が入ってくるにつれて、わたしは呆然としました。わたしには確信がありました。それは、ヒラリー・クリントンヒラリー・クリントンであるからではなく、人種差別主義者、外国人恐怖症、ミソジニスト、ホモフォビアのアメリカ国民よりも、進歩や平等の存在を信じているアメリカ国民のほうが多いのだと考えていたからです。これは一般化ですが、でもそうとしか考えられないのです。

 

評論家たちが、投票日にトランプ氏が成し遂げたことについて文脈づけをしようとし、トランプ氏の成功には、脱産業化の現実が大きく関係していると話すのを見ているとき、どうして「経済不安」がこの出来事に大きく関わっているかがわりました。仕事の減少に直面した労働者階級の家族たちは、ワシントンに本当の大きな変化を求めました。彼らは政治的「アウトサイダー」が、見返りにより収入の良い仕事を取り戻してくれることを、願っていたのでしょう。わたしはこの願いを理解することができます。わたしだって、アメリカ経済がすべての人にとって繁栄するところを見たい。けれども、トランプ氏が経済を再活性化してくれるとは、わたしには思えないのです。

 

今夜起きたことのより大きな意味、それは、たくさんの、本当にたくさんのアメリカ国民が、クラン(KKK)によって支援された候補に投票することを望んだということです。彼らは、おおっぴらに女性蔑視を表明した候補に投票したいと望んだということです。彼らは、公に有色人種、移民、そしてムスリムを敵視することを基盤とする候補に投票することを望んだということです。わたしたちは、トランプ氏が、溢れ出すことを賞賛し、許してしまったこの憎しみを無視することはできません。トランプ氏の基盤のさらなる敵意が、彼の当選を、憎しみを行動に移していいのだという許可として捉えてしまうことを恐れています。

 

月曜の夜、わたしは期待に満ちあふれ、興奮していました。11月8日は、素晴らしい1日になるだろうと思っていました。44人の男性が使った大統領の執務室に、ついに女性の大統領が入室するところを見るのだと思っていました。もっとも高いガラスの天井に、ついにヒビが入ることを見る、そのことはわたしにとってとても大きな意味を持っていたのです。果たしてわたしが生きている間に、果たして女性の大統領を見ることがあるのだろうかと、いま考えています。

 

いま、絶望を感じています。どうしようもないほど、がっかりしています。でもわたしは、長いあいだ、この気持ちに溺れていることはできません。絶対にそんなことはしない。トランプ大統領のせいで、世界が終わることはないでしょう。明日、陽は昇ります。明日は、わたしが想像していたよりも、喜びのずっと少ない世界になるかもしれません。でもわたしは乗り越える。わたしたちみんな、乗り越えるのです。

 

しかし、わたしたちの中でもっとも弱い者たちが、いまやさらに弱い存在となってしまうでしょう。なぜなら、共和党が多くを占める議会によって、行政権への監視も、対抗勢力も、いまやほとんど無いに等しいからです。

 

わたしたちは、ここからいったいどこに向かうのでしょうか?これからしばらく、これこそがわたしたちの多くが答えを見出そうとする質問となるでしょう。とりあえず、いちど深呼吸をして、背筋を伸ばして立ち、そしてできるだけ、この新しい現実に慣れることです。わたしたちは、書くこと、プロテストを行うこと、2018年と2020年に投票を行うことで、わたしたちの政府に欠けた監視と、対抗勢力になる必要があります。そうすることによって、わたしたちのなかでもっとも弱い者たちを守れるように。アメリカ国民が長い間、理想として掲げてきた、さらに完璧に近い融合を、保持することができるように。これから、どんな戦いになるか、わたしにはわからない。けれども、わたしたちはこれから、さらに戦わなくてはならないのです。