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#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

ヘレン・マクドナルド『オはオオタカのオ』

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人は近しい何かを喪失したとき、自然へと向かうのかもしれない。

たとえば、シェリル・ストレイドは『ワイルド』の中で、母の死をきっかけにPCTトレイルの1600キロ踏破にチャレンジする。自然の中へたったひとりで、自分と向き合うために。

ヘレン・マクドナルドも、最愛の父の死をきっかけに、オオタカのメイベルを飼い始める。本書では、ヘレンが自分と向き合うのは、作家 T.H.ホワイトを通して、鷹を通してである。

目まぐるしく、オオタカには様々なイメージが照らし出される。飼い慣らされることのない野生、自由、生、死、戦争、自然、歴史、そしてヘレン自身までもが、オオタカへと重なっていく。

そして、同じようにオオタカに魅せられたT.H.ホワイトの、暗く、苦しい生涯に、ヘレン自身の苦しみが重なっていく。

次々に投影されるイメージ、次々にオオタカに付与されていく意味、それらが何重にも重なっていく。その層の中には、果てしない思索、内省の魅力が詰まっていた。そしてその思索は、紛うことなく、生につながっていき、愛する人の死にも向き合うことができるのである。