読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

ガーターベルトとガールパワーとゾンビ ー映画版「高慢と偏見とゾンビ」

f:id:watashidake:20161025151357j:image

じつはあまり期待してなかった映画版「高慢と偏見とゾンビ」なのだけどこれがもう最高のガールパワー映画だった。セス・グレアム・スミスの「高慢と偏見とゾンビ」を読んだ時にイマイチピンとこなかった、オースティン版の「高慢と偏見」で描かれている結婚騒動への風刺が、まさか映画版でこんなにピリッと効いているとは、夢にも思わなかったのである。つまり映画版最高。


高慢と偏見」という古典原作と「ゾンビ」の食い合わせに引いてしまう人も多いのかもしれないけれども、これはめちゃくちゃ真摯に作られたガールパワー映画だと思いますよわたしは!!みんな!映画館に今すぐ向かって!!!(残念ながら公開2週目にしてほとんど公開終了という憂き目に....)

 

(以下ネタバレがあります)

 

・娘たちよ戦士たれ
ベネット家の娘たちはみな、武士としてのトレーニングを受けて育っている。娘たちにトレーニングを受けさせ、戦士として育てるというのは父親の意志だろう。映画が始まってすぐに父親のベネット氏は娘たちのことを"Our warrior daughters"(わたしの戦う娘たち)と呼ぶ。そう、この映画では、娘たちはただのステレオタイプ的な娘たちではないことがはっきりと示されるのである。

そして退屈で軽薄な(けれど悪気はない)な牧師コリンズが、リズにプロポーズし、それを断ったことに激怒する母親を尻目に、ベネット氏はこう言う。「不幸な選択がある。結婚しなければ、母親はもう二度と口をきいてくれないそうだ。けれども、コリンズと結婚するなら、わたしが二度と口をきかないよ」

ここで描かれる父親 ベネット氏は、どこまでも娘自身の幸せを願い、娘の意志によりそう、まさに「こんな父親がほしい 2016」といったキャラクターなのである。


そして戦う娘たちといえば、舞踏会でダーシーはエリザベスとダンスしないのかと聞かれ、こう言う「許容できるけれども、わたしを誘惑するほど魅力的ではない」と。しかし、このあとゾンビ退治をするリズとベネット家の娘たちをみたダーシーは「あの彼女腕は、驚くほど筋肉質だけれども、女らしさを損なうほどではない」(*1)と言ってリズに恋してしまうのだ。そう、戦う娘たちはとんでもなく魅力的なのだ。

 

・プロポーズの言葉の変化
劇中でリズがプロポーズされるのは3回あるのだが、その言葉が各回で印象的に変わっているのである。

1回目のプロポーズは、コリンズ牧師がリズにプロポーズしたとき。
「この家に足を踏み入れてすぐ、あなたに一目惚れし、わたしの人生の伴侶にと思いました。
あなたとの結婚は、わたしの大いなる幸福となるでしょう。
でも夫婦になるのですから、戦士としては引退してもらわなければなりません...
剣などを家に置いておくわけにはいきませんからね」

リズとの結婚は「コリンズの幸福になる」と明言されているのにお気づきだろうか?絶妙にムッとさせる台詞である!(まあでも映画を見ていればわかるけど、コリンズってああ見えて悪意はないんだよね...悪意はないけどナチュラルにウザいタイプの男コリンズ...)


2回目のプロポーズは、ダーシーが密かに想いを寄せていたリズにプロポーズするシーンだ。
「ミス・ベネット、あなたを様々な点で劣っているとする人もたくさんいるだろう。たとえばあなたの生まれ、家柄、富やなんかで。
でもそんなことはわたしの気持ちを抑えることはできない。
わたしは苦しみ、悩んだ。
わたしはあなたに純粋な憧れと尊敬を抱くようになったのです。
どうか、わたしの苦しみを終わらせて、わたしの妻になってくれませんか?」

ここでもプロポーズの主体はダーシーである。「ダーシーの」苦しみを終わらせるための結婚であり、先ほどのコリンズのプロポーズにつづき、リズはこのプロポーズにおける幸福の主体とは捉えられていないようにも感じられる。

 

3回目のプロポーズは、万難去った後、再度ダーシーがリズにプロポーズするときである。
「わたしへの気持ちは変わったでしょうか?
あなたから一言返事をいただければ、もうこの件について話すことはありません。
エリザベス・ベネット、あなたはわたしの最愛の人です。
半分苦しみながら...
半分は期待とともに...
聞かせてください...
わたしをあなたの夫になるという、とてもとても素晴らしい名誉に預からせてくれませんか?」

3度目の正直とばかりに、ここでは「妻」という言葉が出てこない。ダーシーが「リズの」夫になるというプロポーズの台詞であり、それをダーシーは名誉なことであると言っているのである。これは、最高のプロポーズではなかろうか?リズの「イエス!」の返事に、ガッツポーズしたのはダーシーだけではない。この素敵なプロポーズを聞いてわたしも劇場でガッツポーズをしたのである。

 

・白馬の王子は誰なのか
リズも何度か危機をダーシーによって救われるが、じつはこの映画における白馬の王子はベネット家の娘たち、リズとジェーンである。インビトウィンで対ゾンビ戦の指揮をとるビングリーとダーシーが、ともに窮地に陥ったとき、どこからともなく現れて2人を救うのは、リズとジェーンだ。

とくに、ビングリーにいたっては、なぜ前線に出てきたの?と聞きたくなるほどどんくさく、自宅にゾンビが侵入してきたときも、退治に行くのに躊躇したり、挙句の果てには、階段から落ちて気絶している始末である。前線でも、凡ミス(なぜ戦場にリボン付きブラウス着てきたのかな...?しかもそれが命取りになってるよ...)で窮地に陥ったビングリー(=姫)を、ジェーンが身を挺して守るのであった。

そして、この映画で、最後に白馬を駆るのはリズであり、戦う女の子なのである。つまり最高なのである。

 

というわけで、つらつらと、最高だった部分をメモ書きしてみましたが、とにもかくにも、戦う女の子最高!バッタバッタとゾンビをなぎ倒す女の子最高!ドレスの下に武器を隠す女の子最高!の最高ばっかりのガールパワー映画でしたので、ぜひ見てほしい。アーッ、ほんとに最高だったーァ!!!!!華金にビール片手に見たい最高の1本です!!!

 

(朗報!) 概ね公開終了してしまっていますが、都内(23区内ではなくてごめんね)では11/19から、八王子のニュー八王子シネマでかかるそうです。ちょっと遠いですがお出かけついでにぜひ!!!