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#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

セレブリティとフェミニズムとわたし

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わたしはふだん雑誌をまったくと言うほど読まない。けれど、今年に入ってから10代のころに買っていた雑誌がフェミニズムの特集を組んでいたのを知って、ELLEジャポンとGOSSIPSのバックナンバー(*1)を取り寄せた。

たとえばELLE UKは毎年"Feminism issue"と題した号を出版したり、3つの広告代理店に依頼して、フェミニズムのイメージを刷新するための特集号(*2) を出している。こういうものから比べると、数ページの特集ではすこし物足りなさも感じてしまう。でも、こんなオシャレでポップな雑誌にフェミニズムという文字が躍ることが、すこし驚きだった。

もしかしてフェミニズムってかっこよくてオシャレなことになってきてるのかな。そのうち、会社のエレベーターで乗り合わせた女の子たちと「おはよう」のあとに「挨拶代わりのフェミニズムトーク」みたいなことができるようになったりするのかもしれない。

わたしたちが、フェミニズムをクールなものとして捉え、そして自分がフェミニストであると胸をはって宣言できるようになったのには、フェミニストを自称し、フェミニズムを啓蒙するセレブリティたちの影響が大きくあるだろう。

エマ・ワトソン国連大使として"HeFORShe"というキャンペーンを行った。そして、女優業の休業宣言のあとには"Our Shared Shelf"というフェミニズムに関する書籍を取り上げ、そして誰でも参加できるブッククラブを立ち上げた。

ジェニファー・ローレンスは、流行ってるようなフェミニズムには興味がなかったと言いながらも、自分と、共演者たちとの性別による賃金格差を訴えるエッセイを執筆した。そのエッセイが発表されたのは、同じく女優のレナ・ダナムが主宰する"LENNY LETTER"というウェブマガジンだ。このウェブマガジン上ではほかにも女優のエミリー・ラタコウスキが自分のボディ・イメージに関するエッセイを発表したりもしている。

どうやら、いまをときめく、わたしたちと同世代あのセレブリティたちが、こぞってフェミニズムに夢中になっているようだ。

そして、わたしは、そのセレブリティたちの発信するフェミニズムを、喜んで享受し、そして再発信している。なんで、セレブリティではないフェミニストの発言より、フェミニストであることを公言するセレブリティの発言や行動のほうが、追いかけやすくて、再発信しやすいんだろう。それはたぶん、誤解を恐れずに言えば、彼女たちは可愛くて、若くて、かっこいいからだ。誰もがあこがれるスターだからだ。

ロクサーヌ・ゲイが2014年にガーディアンに寄せたコラム(*3)には、いつものロクサーヌとは違う辛辣な口調で、こんなことが書かれていた。

「あまりにも多くの人が、(フェミニズムという)言葉の意味することについて、そしてその運動が成し遂げようとしていることについて、意識的に無関心になっている。それなのに、可愛くて若い女性がフェミニズムについて、なにか発言しようとする。そうすると、突然その広くいきわたった無関心がなかったことになったり、一旦保留されたりする。なぜなら、あまりにも長い間フェミニズムが伝えようとしてきたまさにそのメッセージを訴える、より聞こえのいい声が手に入ったからだ。」

つまり、いまセレブリティの訴えているフェミニズムというのは、もちろん彼女たちの経験や意志から発されているものであったとしても、それと同じことをずっと前からフェミニズムは訴えてきたのだ。彼女たちの魅力ゆえに、わたしたちはセレブリティたちの訴えるフェミニズムに興味を持ち、賞賛するけれども、彼女たちの訴えの意味するところは、フェミニズムのほんの入り口のすぎない。

わたしはこのロクサーヌ・ゲイのエッセイを読んで、頬を叩かれたような気持ちになった。

わたしがいままで感銘を受け、発信してきたこと、それはただの入り口にすぎなくて、それもわたしはセレブリティの魅力によるところの大きいそのフェミニズムを、ある意味憧れの眼差しで見つめてきたのだ。あんな風のフェミニストを自称し、フェミニズムを広めようとするセレブリティたちがいるのは、すごくうらやましいことだと。

ひとつ気をつけたいのは、ロクサーヌフェミニストを自称するセレブリティたちのことを「彼女たちはフェミニストではない」とはひとことも言っていないというところ。フェミニズムを自称することは、誰にでもできることだ。そして、だれかほかの人がフェミニストを自称することを「あの人はほんとうはフェミニストではない」と非難することは、決してすべきでない。

「わたしたち女性は、お互いがそれぞれ異なる意見を持ち、選択をしていても、お互いがフェミニストである、と認めることが大切だ」とわたしに教えてくれたのは、ほかでもないロクサーヌだ。(*4)

しかし、それと同時にセレブリティ・フェミニズムが広げてくれたフェミニズムの戸口から、その先へ、わたしたちがどれだけフェミニズムについて、さらに知り、語り、聞き、動いていくことができるのか。それが重要なのだ。広がった戸口だけを賛美するだけで満足することなく、わたしにはもっと知るべきことがあるのだ。わたしにはもっと聞くべきことがある。わたしにはもっとすべきこともある。

このロクサーヌの記事が書かれたのは2014年、エマ・ワトソンはその後に"Our Shared Shelf"というブッククラブを立ち上げた。レナ・ダナムは前述の"Lenny Letter"を立ち上げ、様々な書き手(ミシェル大統領夫人から、ジェーン・フォンダ、そして若き女性醸造家まで)による多様なトピックに関するエッセイを掲載し、無料で、誰でもが様々な意見や知識に触れることのできる環境を作った。彼女たちは、自分たちの広げたフェミニズムの戸口から、さらにいろんなことを学べるような活動を続けている。

*1
ELLEジャポン 2016年3月号
GOSSIPS 2016年3月号
*2
ELLE UK “ELLE rebrands feminism”
http://www.elleuk.com/fashion/celebrity-style/elle-rebrands-feminism

*3
The Guardian “Emma Watson? Jennifer Lawrence? These aren’t the feminists you’re looking for” by Roxane Gay
http://www.theguardian.com/commentisfree/2014/oct/10/-sp-jennifer-lawrence-emma-watson-feminists-celebrity

*4
The Guardian “Beyonce’s control of her own body image belies the bell hooks slave critique”
http://www.theguardian.com/commentisfree/2014/may/12/beyonce-bell-hooks-slave-terrrorist