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#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

わたしの「色履歴書」 -『女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美

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ピンク問題…とりわけわたしたちとピンクの関係は、思ったより複雑である。もはや、ピンクはただの色ではなく、ピンクの裏にはたくさんの社会的意味づけがされているのだ。

例えば、ピンクと聞いてどんなことを連想するだろう?「女らしさ」「可愛らしさ」「愛され」「モテ」わたしは「ピンク」ときくと、こんなことを思い浮かべる。もちろん、色として、素敵なピンク色もある。でもそれは、なんというかわたしの中では「ピンク」という括りではない。

堀越英美『女の子は本当にピンクが好きなのか?』は、そんなピンクとわたしたちの関係を、そしていつの間にかピンクという色についてまわるようになった社会的な意味の歴史や推移を考察した本だ。

そして、この本を読んで思った。そんなに女の子がピンクに囲まれて育つなら、「わたしの色履歴書」はどんなものだろう、と。もしかしてわたしも幼少期にはピンクのおべべを着せられて、プリンセスグッズをおねだりしながら大きくなってきたのかもしれない。急にそんな不安(というとピンクに失礼だけど)に襲われたのだ。

というわけで、いま母親にわたしの幼少期のことを聞いては、セーラームーンよりドラゴンボールが好きで、なぜかピッコロ大魔王と、ピーターパンのフック船長が初恋の相手だった、という謎多い幼少期のじぶんと出会ったところである。

そして、幼少期のアルバム(これが改めて見るとすごくこっぱずかしいので、なかなか進まない)を引っ張り出したりしながら、わたしはわたしの色の履歴を探っている。どうやらわたしは、いとこのお下がりの洋服で、黒や紺色や、子供らしくないシックな色の洋服を着ていたようだ。わたしの実家とは異なって、いとこは裕福な家だったので、コムサなどのブランド物をたくさん譲り受けていたんだそうだ。(もちろん子供らしい可愛い色の服を着たいと泣き、セーラームーンのTシャツがほしいと死ぬほど駄々をこねたという証言も出てきている)

ちなみに、いまわたしの洋服ダンスを開けると見えるのは会社用の「黒/灰色/茶色/白色/紺色」の洋服と、休日用の「オレンジ、赤、紺、青、みずいろ、派手な柄物」の洋服だ。

いちど会社にお気に入りだった、すごく綺麗なそらいろのスカートを履いていったら、意地悪な先輩たちに指をさされて笑われたので、わたしはもう会社には土色の服しか着ていかないと決めている。

ところでいま読んでいる石井桃子のエッセイ集『家と庭と犬とねこ』に、こんな話が書かれていた。

買い物に出かけた折に、黒と白の布を買おうとしたところ、友人の止められて、かわりにピンクと白の布をすすめられたそうだ。そしてそのピンクと白の布で作った服を着ていたところ、みんなから「元気そうですね」と褒められたそうだ。

そして石井桃子はこう書いている。

「こう言われると、こちらも、たしかに元気になる。ピンクを着なかったころよりももちろん、そのためばかりでもあるまいが、ずっと食慾も出、笑うことも多くなった。」
(石井桃子『家と庭と犬とねこ』収録「ピンクの服」より)

いまはピンクが苦手だけれど、いつかわたしも、誰かと買い物に行った先で手に取った地味な色の服のかわりに「これがいいんじゃない」とピンクの洋服をすすめられて、照れくさいけど、若返った気持ちになったり、心が華やいだりするような、そんな体験をしたいと思った。

だって、こころの奥底では、わたしたちがこんなにも苦手に思っているのは「ピンク色」ではないと、わかっているから。