#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

パークアヴェニューの妻たち』ウェンズデー・マーティン

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ニューヨークのアッパーイーストサイドと聞くとなにを思い浮かべるだろう。わたしが思い浮かべるのはたくさんの、キラキラした映画だ。たとえば、『ティファニーで朝食を』『SEX AND THE CITY』『GOSSIP GIRL』など。なんというか「キラキラした女の子の憧れの地」というかんじがする。つまり、わたしなんかには、はるか彼方の夢物語の舞台であるような気がするということだ。でもアッパーイーストサイドは実在するし、そこには彼女たちがいる。そう、女たち、妻たちが!

『パークアベニューの妻たち』はいっけんするとChic-Lit(女性向け小説)のようなタイトルだけれども、じつはアッパーイーストサイドに住む「妻たち」を文化人類学的に分析した本だ。アッパーイーストサイドに住む妻たちには、特定の行動様式(幼稚園選び、ママ友作り、エクササイズ通いなど)がある。そこでとられる仲間はずれや仲間作りの行動を、アッパーイーストサイドに子供を連れて引っ越した社会学者ウェンズデー・マーティンが類人猿の群れでの行動を比較しながら分析したのがこの本なのだ。

アッパーイーストサイドに住む妻たち?わたしたちには遠く離れた夢のような暮らしをしている人たちでしょう、と思うかもしれないけれど、彼女たちの仲間作り/仲間はずれ/マウンティングの様式は、意外にもわたしでも経験したことがあることばかりだった。

わたしは、読み進めながら「アッ、中学生のとき、あのグループに意地悪されたのはこういうことだったのか!」「アッ、電車や道などで、どんどんわたしのスペースを侵略してくるパーソナルスペース音痴の野郎どもはこういうことだったのか!」などと「いままでにされた嫌なことリスト」をほじくり返しては、「ふふん、猿でもやってるボス猿になるためのテクニックだったわけね!」「はぁん、人に自分のスペースを明け渡させることで権力を誇示したかったわけねえ!たかだか道端や電車でねえ!」などと大いに溜飲を下げた。驚くべきことに、類人猿の行動様式は、アッパーイーストサイドの金持ちにも、新橋のサラリーマンにも適用可能であった。

そう、夢のような高級住宅地、アッパーイーストサイドに住む妻たちも人間であり、わたしたちと同じ、類人猿なのだ!そして、夢物語の裏側を描いたこの本にあるように、彼女たちの生活のほうが、普通に暮らしているわたしたちの生活よりも、ずっとストレスまみれのイバラの道なのかもしれない。

この本を読んだあとは、アッパーイーストサイドを舞台に描かれるキラキラした映画や本にも、プライドとか意地悪とか、そんなキラキラなんかじゃなくて、ドロッドロしたものを抱えて生きる「パークアヴェニューの妻たち」の存在を感じずにはいられないだろう。