#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

#23 亡き王女のためのパヴァーヌ - パク・ミンギュ

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わたしたちみんなのなかに「彼女」はいる。そう思った。この本を読んで、その「彼女」を心の奥底の、見えないように隠した小部屋から連れ出してあげなくてはいけないんだ、だいじょうぶだよ、そんなところにいなくても、辛かったね、と「彼女」の傷口に優しく薬を塗ってあげなければいけないのだと。

わたしは小中とそれなりに暗黒時代を過ごしたのだけど、高校・大学とアルバイトではすごく人に恵まれた。わたしの見てくれじゃなく、わたしの勉強ぶり、好きなこと、話すこと、考えること、仕事ぶりをみてくれる人に恵まれたとおもう。付き合った人たちだって、みんな結婚だとかなんとかという「こうなるべき」である幸せなんか気にしなくて、気が合うから一緒にいる、そんなかんじだった。

けれども社会人になるとそうもいかない。「こうなるべき」であると思い込んだ幸せにむけて、なんとなく進んでいかなければいけないのだ。

わたしも「こうなるべき」である姿である、社会人になり、仕事をする、なんとなくそういう生活を送るようになる。社会人になる前だったらそれで評価されてきたかもしれないけれど、いまの会社では、仕事ぶり以上に女としての華やかさ、みてくれが評価されていることをわたしは知っている。いくら頑張って仕事をしても、接待の場で誰よりも気を使っても、なんだかお酌しないで座っている、あの華やかで可愛い子たちほどは評価されないし、損な役回りばかり回ってくる。そんなことに気づいてしまう。

「こうあるべき」なんだと思って合コンなんかに行っても、なんか違う。結婚だとかそういうことが視野に入った場で、赤の他人とご飯を食べて、もちろん当然のようにうまくいかなくて、ああ、もしかしたらわたしはこういう「社会一般としてこうあるべき、な幸せ」という土俵には向かない人間なのかもしれないな、と思った。開き直って一人だっていいさ、なんて好きなように生きているけど、でもそう気づくまでにわたしのなかの「彼女」も少なからず傷ついていたのかもしれない。

そんなこのところのモヤモヤした気持ちを、「それでもいいんだ。」と言ってくれるような、すごく哀しいけれど優しい本だった。

心の中に「彼女」がいるわたしは、決してこの本のことを笑うことができない。パク・ミンギュはすごく優しい人なんだと思う。明るく笑っている、その人の心の哀しさも、傷ついた人のその辛さをきちんと読み取れる人なのだと思う。

独特の改行も、慣れるとなんだか途切れ目から浮かび上がってくるニュアンスや、息を詰めてしゃべっているようなかんじの息継ぎまで伝わってくるようだ。

筆者の優しい眼差しと、傷ついた人を包み込むような内容は、雨宮まみ著作のファンの方なんかすごくハマると思う。

パク・ミンギュ、ほかの長編も短編もすごく気になるのでどんどん翻訳がでてくれたら嬉しい。