#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

#14 My Struggle Book 1 - Karl Ove Knausgaard

f:id:watashidake:20160927161636j:image

この"My struggle"シリーズはノルウェーでは国民の9人に1人が読んだという、ノルウェー人作家の3600ページに及ぶ自伝的小説です(BOOK1は今年邦訳がでるそうです)

かなり赤裸々に自分の家族や周りのひとびとのことをつづったため、なんだかモメているらしく、背表紙の裏には「この小説がやっかいごとを巻き起こすなんて考えてもみなかった ー僕は事実を語っただけではないか?でも僕はとてもバカ正直に、第1巻の発売前に関係者全員にコピーを送って、そして、いかにこれが大変なことになるかがわかったんだ。まるで地獄だ。」と書かれています。本国ノルウェーでも本書が出版されるとベストセラー&スキャンダルになったとか。

実際ノルウェー国民の9人にひとりが読んだ(3600ページ第6巻もあるのに)と聞いたときは「ぜったい買っただけで挫折した人いるよね…? 怒らないからちょっと手をあげてみ?」といった気持ちになりましたが、これは、読めちゃうかも。買っちゃうかも、といったおもしろさでした!

(著者名でグーグル検索していただくとわかりますがオーブ・クナウスゴールはかなりハンサムでもあります。めちゃくちゃ渋い…かっこいい…)

***

まさに突然降った雨があがった後に、いつもの道から立ち上る生臭いにおい。読み進めるほどにそんな臭いが立ち上ってくるようなすごい小説(自伝?)でした。

冒頭から重々しい筆致で語られる死と、オーヴ・クナウスゴールが幼少時に、テレビに写った船の遭難した海にみた顔、そのイメージがこの本全体に重くまとわりつき、読み進めるほどにその死の現場にみたその顔が、わたしの脳裏にも浮かびあがってくるような語り口がとても魅力的です。冒頭の死についての記述の圧力がすごくて、そこで語られた重い死の影が作品全体を包みこんでいくような印象でした。

ともすれば長いだけで退屈になってしまう可能性も十分にある自伝的小説ですが、これはその重々しさに圧倒され、とふとしたことをきっかけに過去と現在、あちらとこちらを行き来して、自分の顔に深く刻まれたその皺を一本ずつ読み解いていくような、オーヴ・クナウスゴールの思考に引き込まれていきます。

小説家として、父親として、夫として、息子としての責任や、手から砂のようにこぼれていってしまう時間に対する、怒り、焦燥そしてエゴがヒリヒリするほどに、すごい圧力で伝わってきて、もう圧倒されるままに1巻読み終えてしまいました。父親に対する息子の複雑な気持ちと、その父親の死の現場の様子は、ほんとうに壮絶としか言いようがないのですが、これもネタバレしたくないのでみなさま邦訳でたらぜひ読んでほしい一冊!

サウンドトラックTom Waitsの"Rain dogs"です。
Tom Waitsの独特なしゃがれ声が、この本のヒリヒリするような感覚、そしてオーヴ・クナウスゴールの葛藤にとてもよく合います。(そして読了後はウイスキーでも飲みたくなるのです)