#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

#12 The First Bad Man- Miranda July

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ミランダ・ジュライの初長編小説。すごく良い小説だった。(すぐに邦訳がでるし、みんな読むと思うのでネタバレしないようにしないと…)

わたしたちはみなひとりぼっちで、それをどこかでわかっているからこそ、誰かとのロマンティックで運命的な結びつきを求めている。それは往々にして得ることができない、だからこそわたしたちはまだ見ぬ他者や、さきほどすこしすれ違っただけの他者にその思いを投影しているのだろう。

寂しさを感じたり、ひとりぽっちのじぶんの生活のリズムを乱されないようにするために、じぶんだけのルールを作って淡々と生活するシェリルは、孤独に生きるわたしたちの生き写しのよう。

じぶんの生活への思わぬ闖入者によって乱されるシェリルのそれまでの平凡で退屈な(でもとてもオーガナイズされてはいる)生活が、怒り、暴力、演技、生と死、愛、セックスによって混乱やときには迷走しながらもだんだん変わっていくのを読むのはわたしにとってもカタルシスだった。

じつは始めのほうのどこか不思議なかんじや、不穏な空気がとても不安で、どうなるんだろうとドキドキしながらページをめくっていたのですが、ページをめくるたびにシェリルのことが愛おしくなっていって、そして訪れるエピローグでかんぜんにわたしの涙腺が崩壊しました。こんなのずるい。こんな愛おしい話ずるい。

すべてのことは永遠に続くわけではなく、始まりがあれば終わりがある。失われた人間関係や、その代わりに得る関係も、なにごとも永久ではない。タイミングが合わずに失われたもの、手に入れることすらできなかったことは、わたしを悲しくさせる。だけれども、人生はすてきなものだ。そう思わせてくれる、素晴らしい小説でした。

歪で不器用な世界を見つめるミランダ・ジュライの視線は、どこまでも優しい。

サウンドトラックは、むかし高円寺にあったLinus Recordsで買った、それぞれのアーティストがじぶんのお気に入りの場所で録音したフィールドレコーディングのアルバム"Favorite Places"です。

なんてことないただの場所の音と思う人もいるかもしれないけれど、その場所への愛おしさがつまった、世界がすこし素敵に見えるようなとても素敵なアルバムです。