#わたしだけのブッククラブ

written by Nao (twitter: smkebks)

#7 Object of Beauty - Steve Martin

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今回の(わたしだけの)課題図書スティーブ・マーティン著作です!アメリカンコメディ好きのみなさまだったら「同姓同名のコメディアンいるよね!」とお気づきかもしれませんが、そう、これそのコメディアンの(「サボテン・ブラザーズ」とか「裸の銃を持つ男」のね!)スティーブ・マーティン著作なんです。

邦訳がでている(そしてレイチェル・マクアダムス主演で映画化もされている)「ショップ・ガール」なんかも彼の著作です。じつは!多才です。すてき!

この"An Object Of Beauty"は、オークション会社のSotherbyで働き始め、自分の美貌と若さと貪欲さでアート界をのし上がって行くレイシーとその野心の行方を、彼女に恋心を抱くアートライター、ダニエルが綴った物語です。

歴史ある美術品が高値で取引されていく現場で、「美の対象は金と交換可能である」と言い切ってしまうこの小説はとても資本主義的だし、それに対するレイシーの態度もとてもビジネスライクです。(彼女の若さや美も、消費される対象であり、金や美術品と交換可能なアイテムでしかない。)アートなんていいながら、結局金なんです。そうなると本当の「美の対象」ってなんだろうって考えちゃって、それが金だけだなんて、すこし悲しい。

それに「ルノワールの若い女の絵は、歳をとった女の絵を描いたルノワールの絵よりも高く売れる」という一文が、冒頭の「レイシーも40歳にもなれば、バラ色に頬を染めたところでそう簡単に許されることもなくなる」というキツい一文と結びついたとき、この小説はとても辛辣に心に響きます。

随所で引用されるアメリカの現代美術をはじめとする絵画がどれも素敵だったし、それら(美)がどのように扱われていくかも含めて、とても面白かったです。わたしのようなド庶民には縁遠い場所ですが、いちど絵画のオークションに行ってみたくなりました。

ちなみにまだ構想の段階ですが、エイミー・アダムス主演で映画化の話もあるそう。脚本はスティーブ・マーティンと、「ラブストーリーズ コナーの涙/エリナーの愛情」が楽しみなネッド・ベンソンだそう。わくわく。

今回のサウンドトラックはレナード・コーエンです。
わたしは「美」について考えるときいつもレナード・コーエンの"Chelsea hotel #2"のことを考えずにはいられません。この曲は容姿にコンプレックスのあったレナードと、ジャニス・ジョップリンの関係を歌った歌です。

この曲の歌詞に「わたしたちは醜い。でもわたしたちには音楽があるじゃない」とあるのですが、あんなにも素晴らしい音楽を作っていたジャニスにとっての「美」とは何だったのかを思うと胸が苦しくなります。この曲をきくたび、容姿というコンプレックスによってドラッグに溺れる2人の姿がとても悲しく響く、とても美しい歌です。